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銭ゲバ/ジョージ秋山

銭ゲバ 上 (1) (幻冬舎文庫 し 20-4)銭ゲバ 上
(2007/10)
ジョージ秋山



銭ゲバ 下 (3) (幻冬舎文庫 し 20-5)銭ゲバ 下
(2007/10)
ジョージ秋山



「銭ゲバ」たまに耳にする言葉である。プロ野球の契約更改の時とか。その語源がこの漫画であることはあまり知られてないんではなかろうか。奇才ジョージ秋山が週刊少年サンデー1970年13号〜1971年6号に連載。

何とも救いの無い話である。
まず話のとっかかりが金がなくて病気の母親が医者に来てもらえず死ぬ。そして金欲しさに置き引きをやるがそれを兄に発見され咎められるが兄を殺してしまう。スタートからしてこれである、読み進めてどこかで救いがあるかというとどこにも無い。ただの1ページたりともない。ページを開くと自殺だ公害だ殺人だそんなんばっかである。そして衝撃の結末。こんな話が1970年には少年サンデーで連載されていたということに驚かされる。俺のサンデーのイメージはあだち充だw

俺が持っているのは復刻された文庫版じゃなくて当時若木書房からでたものだ。当時のコミックは240円だったのかぁなどと感慨にふけることが出来るが貸本下がりなので物凄い劣悪な保存状態である。その若木書房版1巻に故尾崎秀樹氏による解説が書かれている。俺のケツ拭く紙にもならん駄文よりそっちの方が有用であろう。

 現代の悪に対する作者の満身の怒りがこめられた作品! 尾崎秀樹

これまでの日本の子どもまんがは、よい子まんがの伝統をひいて、ほほえましい人間タイプの創造につとめてきた。しかし現実社会の複雑なありかたは必然的に空くのキャラクターの登場をうながす。ジョージ秋山の「銭ゲバ」はまさにそのような作品なのだ。
 主人公の蒲郡風太郎の心の奥底には、「かあちゃんは銭があったら死ななかったズラ」という、ホゾをかむような思いがどぎつくトグロをまいている。この思いが風太郎を金銭の鬼にもかえ、連続殺人をあえておかさせ、悪の階段をふみのぼってゆくことになる。しかもその悪のコースは、個人的なものから公のものへとひろがり大昭物産社長のいすにつくことによって、社会的問題にまで発展する。公害問題や政治の裏幕がえぐりだされるのも、風太郎の悪の軌跡が生み出した汚辱の足跡なのだ。
 ゼラチン培養基の上にハエの足跡がつくったバイキンの集落が浮き上がるように、風太郎のたどる道には悪の華があやしい色を咲かせるのだ。
 ジョージ秋山「銭ゲバ」のなかで道徳的な善玉悪玉論議をやってきるわけではない。むしろ道学者的なモラルづくりに真っ向から対決し、徹底した悪を描くことによって、読者の中に悪への憎しみを育てようとしている。目をおおいたくなるような悪の行為の積み重ねの上に、ジョージ秋山がいいたいことはなんであるか、それは現代の悪がもつ、複雑でまた奇怪な姿に対する満身からの怒りであろう。私は戦後のまんが世代の気持ちの中にうずく、おとな社会に対する不満をそこに見るのだ。
 かつて「金色夜叉」の貫一はダイヤに目がくらんだ婚約者に失恋して、れいこくな金貸しとなった。「銭ゲバ」のお風太郎はお金がないばかりに母を見殺しにしなければなからかったことを、心の傷として、現代版の貫一となった。「銭ゲバ」の中に逆説的に語られている、作者のねがいを読む必要があろう。

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